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皆様は性同一性障害という言葉を聞いた事はあるでしょうか。
性同一性障害とは身体的性と性自認が一致しない状態をいいます。
「男性/女性として生まれたけど、女性/男性として生きたい。そんな時はどうすればいいのか」
当事者の方はそういった悩みを抱えてしまう事が多いです。
その悩みを解決できる方法の1つがSRSというものです。
今回はそんなSRSについて解説していきます!
SRSとは?
SRSとは性別適合手術を英語表記した際の頭文字を取ったものです。
- S→Sex(読み:セックス/意味:性)
- R→Reassignment(読み:リーアサイメント/意味:再割り当て)
- S→Surgery(読み:サージェリー/意味:手術)
つまり、「性別適合手術(以下、SRSと表記)」は手術によって生まれ持った性別とは別の性別を割り当てるという事になります。
性別適合手術とは?
性同一性障害当事者の方に対し、当事者本人の性自認に合わせて、身体的構造を変える手術。
このSRSでは具体的にどういった手術が出来るのでしょうか。
SRSで出来る手術
【男性から女性への性別適合手術の場合】①陰茎切断・睾丸摘出手術(いんけいせつだん・こうがんてきししゅつしゅじゅつ)
陰茎とはペニス、睾丸とは男性ホルモンや精子を作る役割を担う臓器の事で、男性のシンボル的存在でもあります。
そんな陰茎と睾丸を切除する事で外陰部が女性のものに近づく事が出来ます。
用語解説①
【外陰部(がいいんぶ)とは?】
女性の性器器官の内、外部に表れているもの。
主に陰唇(いんしん)・陰核(いんかく/男性で言うペニスの事)・膣(ちつ)の事。
【男性から女性への性別適合手術の場合】②膣形成術(ちつけいせいじゅつ)(陰茎切断・睾丸摘出後)
この膣形成術には以下、2つの方法があります。
- ①皮弁法(かべんほう):陰茎(ペニス)と睾丸を切除した後に余った皮膚で小陰唇(しょういんしん)といった女性器を形成していく方法。
- ②S状結腸法(えすじょうけっちょうほう):下腹部を開腹(腹をメスで切り開く事)した後、直腸と大腸を繋いでいるS字結腸を10数cmの血管や神経などが接続している状態で切り離して、膣(ちつ)として転用する方法。
用語解説②
直腸(ちょくちょう):肛門の上にある消化管の一部で、便が肛門を通って体外に排出されるまで、便を蓄えておく器官。
大腸(だいちょう):水分などを吸収し、便を作る働きをしている器官で盲腸、結腸、直腸に分けられる。
結腸(けっちょう):便を作る器官。
S字結腸(えすじけっちょう):結腸の末端にある部分。
【男性から女性への性別適合手術の場合】③豊胸術(ほうきょうじゅつ)
豊胸術とは、体内にシリコンバッグを挿入して、女性乳房を作る手術です。
用語解説③
【シリコンバッグとは?】
シリコンという素材で出来たバッグの事。
男性から女性になるための手術の主な種類はここまで紹介した3つです。
この3つ以外にも脱毛や女性ホルモンの注射、喉仏の切除などと言った手術があります。
【女性から男性への性別適合手術の場合】①乳房切除術(にゅうぼうせつじょじゅつ)
乳房切除術とは、女性の身体的特徴である乳房を切除する手術の事です。
乳房の大きさなどによって、術式が異なってくるのですが、一般的には大胸筋と小胸筋を残して、乳房全体を切除する「胸筋温存乳房切除術(きょうきんおんぞんにゅうぼうせつじょじゅつ)」が一般的な術式として知られています。
【女性から男性への性別適合手術の場合】②子宮卵巣摘出・膣閉鎖術(しきゅうらんそうてきしゅつ・ちつへいさじゅつ)
子宮卵巣摘出・膣閉鎖術とは女性機能を無くすために、手術によって子宮卵巣を取り除く事、膣閉鎖術とは膣壁(ちつへき)というものを縫い合わせる手術の事です。
用語解説④
子宮(しきゅう):妊娠の際に胎児(たいじ)を育てる器官の事。
卵巣(らんそう):女性ホルモンの分泌を行う事で乳房の発達や妊娠など、女性の生理過程において大きな役割を果たす器官の事。
膣(ちつ):女性における生殖器の事。出産の際はここから赤ちゃんが出てくる。
このように子宮や卵巣、そして膣は女性の生理機能においてとても重要な役割を果たす器官です。
そのため、これらの器官を切除する事で妊娠が出来ない体になっていきます。
【女性から男性への性別適合手術の場合】③尿道延長術(にょうどうえんちょうじゅつ)
尿道(にょうどう)は膀胱(ぼうこう)から尿の出口までの通り道の事を言います。
尿道延長術は男性のシンボルでもある陰茎(ペニス)を形成する事を前提に置き、尿道の長さを長くする手術の事です。
【女性から男性への性別適合手術の場合】④陰茎形成術(いんけいけいせいじゅつ)
男性のシンボルでもある陰茎(ペニス)を形成していく手術です。
方法としては腕や太腿(ふともも)の皮膚を使って陰茎を作っていきます。
女性から男性になるために陰茎形成はとても重要な手術と言えるのではないでしょうか。
さて次の項目からは肝心な費用、そして手術のデメリットとメリットを紹介します。
SRSの費用
トータルではFtMは100万円から200万円、MtFは睾丸・陰茎(ペニス)の摘出で130万円~150万円、造膣も一緒にやる場合は、200万円から250万円程かかってしまいます。(その他、実際にかかる費用の目安は下の図で説明しています)。
【図① SRSにおける具体的費用】
手術名 | 費用 |
---|---|
専門的な知識がある医師の診断書 | 3,000円~数万円 |
ホルモン治療 | 1,500円~5,000円/回 |
乳房切除術(FtM) | 50万円~130万円 |
子宮卵巣摘出(FtM) | 50万円~140万円 ※タイ・バンコクで手術を受けた場合 |
陰茎(ペニス)形成(FtM) | 300万円 |
精巣摘出・陰茎(ペニス)切除(MtF) | 120万円~300万円 |
用語解説⑤
FtM:身体的特徴が女性で性自認が男性の方。
MtF:身体的特徴が男性で性自認が女性の方。
また、SRSを受けた場合のデメリット・メリットは下図の通りです。
【図② SRSを受けた際のデメリットとメリット】
デメリット | メリット |
---|---|
体への負担がとても大きい事。輸血が必要になったり、合併症が起こるリスクがある。 手術による身体的負担のため、長期間の休みが必要になる。 | 本来の自分が望む性別で生きられる。戸籍上の性別を変えられる事でFtM/MtF当事者の方は男性/女性の方と法律婚が出来る。 |
SRSについて理解を深められましたか?
SRSとは性別適合手術を英語表記した際の頭文字を取ったものです。
SRSでは男性から女性、女性から男性になるために様々な手術をする事が出来ます。
しかし、心身に大きな負担がかかるといったデメリットと戸籍上の性別を変えられるというメリットがあります。
もし、性別適合手術を受ける際には今回紹介したデメリットやメリット等を考え、慎重に検討していただけると幸いです。
併せて見たい!
b-LIGHT公式サイトでは、性同一性障害に関するサポートを行っている株式会社G-pitという会社の情報を公開しています!
そちらもぜひ見てみてください!
またSRSに関しては戸籍上の性別の変更要件や手術を受けるまでの流れといった話題も数多くあるので、そういった話題もまた記事にしていこうと思います。
参考文献一覧
北九州市いのちとこころの情報サイト「性同一性障害について」https://www.ktq-kokoro.jp/lecture/2064(2024年4月6日 閲覧)
ヤンヒー国際病院公式日本語サイト「S字結腸法」https://yanhee.jp/operation/colonvaginnoplasty(2024年4月6日 閲覧)
中外製薬「大腸について」https://www.chugai-pharm.co.jp/ptn/medicine/karada/karada017.html(2024年4月6日 閲覧)
NHK「性別変更の手術要件めぐり 特例法の規定は憲法違反 最高裁」https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231025/k10014236581000.html(2024年4月13日 閲覧)
VOICE OF GID「性同一性障害の人が性別適合手術をするメリット・しないメリット」https://voice-of-gid.com/column/gid-adv-and-disadv/#toc4(2024年4月13日 閲覧
ANDLOAN by CrowdLoan「男性から女性への性別適合手術(性転換手術)費用相場 手術は何歳から可能?健康保険は使える?」https://crowdloan.jp/guide/medicalloan043/(2024年6月1日 閲覧)
ANDLOAN by CrowdLoan「女性から男性への性別適合手術(性転換手術)の費用相場 保険適用や医療費控除も解説」https://crowdloan.jp/guide/medicalloan042/(2024年6月1日 閲覧)
Kazukiプライベートクリニック「性別適合手術の種類」https://kazuki-pc.com/menu/srs/sex/%E6%80%A7%E5%88%A5%E9%81%A9%E5%90%88%E6%89%8B%E8%A1%93%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E/(2024年6月1日 閲覧)