コラム

【当事者監修】アウティングを絶対にしてはいけない理由

突然ですが、アウティングという言葉を知っていますか?
アウティングとは「本人の断りがなく、その人のセクシュアリティについて他人に暴露する事」です。

たとえ当事者のためを想っての行為だったとしても、アウティングは絶対にしてはいけません。アウティングをされた当事者が自殺してしまった…そんな事件も存在するんです。

  • 当事者がどんな思いでカミングアウトするのか
  • アウティングされたらどう感じるのか

僕の経験や実際に起きた事件を元に書きましたので、少しだけでも読んでいただけると嬉しいです。

アウティングをしてはいけない理由

人間関係が悪化したり、いじめられてしまう危険性が高まる

LGBTQというセクシュアリティを受け入れてくれる方もいれば、そうでない方もいます。

LGBTQを受け入れてくれない人に自分のセクシュアリティを知られてしまうと、

その人との関係が悪くなるだけではなく、最悪の場合いじめの対象になる危険性も考えられます。

ですので、当事者にとってカミングアウトはとても慎重に行わなければなりません。

僕の場合は、普段の会話から周りの人の性格を把握してカミングアウトする人を慎重に選んでいます。

後々詳しく説明しますので是非ご覧ください。

当事者本人からの信用を失う

周りに自分のセクシュアリティを隠している人にとって、

カミングアウトをするということはみんなに隠している秘密を打ち明けることになります。

そしてアウティングをするということは、その人の秘密を勝手にばらしてしまうことになるんです。

自分の秘密を勝手にばらす人は信用できないですよね。

また、「あの人と仲が良いから、(当事者のために)先にこっそりと言っておいてあげよう」

相手を気遣っての行動かもしれませんが、当事者にとってはそれもアウティングになってしまいます。

自殺に追い込む可能性もある

残念ながら、アウティングをされた当事者が自殺してしまったケースが実在するんです。

その事件を通称『一橋大学アウティング事件』といいます。

実際にこの悲しい事件がきっかけで、様々な自治体でアウティング禁止条約が設置されました。

  • 事件の詳細
  • どうしてアウティングしてしまったのか
  • アウティングされてどのように感じたのか

これらを後々解説しますので、サッと目を通してもらえるだけでも嬉しいです。

当事者がカミングアウトをする理由

精神的に疲れ、自分の居場所が欲しかったから(そらの場合)

そもそもなぜLGBTQ当事者は、他の人に自分のセクシュアリティを打ち明けるのでしょうか。

大切な人にパートナーを紹介したいから』『性別適合手術をしたいから』など、人それぞれ理由はあります。

僕の場合は、恋愛関係の話題になった時、まるで異性愛者であるかのような振る舞いをしなければいけないのが、本当に疲れてしまったんです。

また、それは仲が良い人に対しても同様に行っていたので、ありのままの自分をさらけ出せる居場所がなくなってしまったんです。

精神的に疲れてしまった』のと『自分の居場所が欲しい』という2つの理由でカミングアウトをしていました。

とはいえカミングアウトをするということは、セクシュアリティを隠す辛さを共有することにもなると考えています。

そのことも踏まえ、僕は誰にカミングアウトをするのかを慎重に選んでいます。

どのようにカミングアウトする人を選ぶのか(そらの場合)

僕は高校生の頃、当時一番信頼していた友達に初めてカミングアウトをしました。

その友達からは、「そらはそらなんだから」と言ってくれてとても嬉しかったのを覚えています。

そう言って励ましてくれたものの、後々その友達がLGBTQに寛容ではない発言や態度をとっている場面を見かけてしまいました。

この経験から、カミングアウトする人を慎重に選ぶようになりました。

仲が良い人、信頼している人の中から選ぶ

カミングアウトをするということは、誰にも言っていない自分の秘密を相手に教えることだと考えています。

自分の秘密を話すのなら、普段から仲良くしてもらっている友達の中から選びたいと思いました。

勿論、LGBTQに関して寛容な友達もいればそうでない方もいます。

もしLGBTQに寛容でない方にカミングアウトをすると、その人との関係性が悪化してしまう可能性があります。

そのため、性格や普段の会話の発言などを参考に、LGBTQに寛容な方を見極めていきます。

LGBTQの話題が出たときの反応の仕方で判断する

まず一つ目の判断要素としては、『LGBTQの話題が出たときにどんな反応をするのか』で判断します。

その反応次第でLGBTQに寛容かどうかがハッキリわかるからです。

実際に僕が聞いた言動を、良い印象を受けた人と、悪い印象を受けた人に分けて紹介します。

  • 悪い印象を受けた人:氷川きよしさんがカミングアウトをされていたニュースを見た時に、「あの人オカマだったんでしょ?」とすこし馬鹿にするような口調で言っていた
  • 良い印象を受けた人:LGBTQに対して理解を深めるため、大学でLGBTQに関する授業を受講していた

他のジャンルでも偏見があるかどうかで判断する

僕の場合はセクシュアリティだけではなく、『他のジャンル対する意見』も参考にしています。

違う価値観と出会った場合、受け入れられる人なのか、否定してしまう人なのかで判断します。

例えば僕が高校生の頃には、こんなことがありました。

僕が通っていた高校では単願(専願)で受験した人よりも伴願で受験した人の方が多く、僕は単願で受験しました。

高校の友達には受験方法を聞かれなかったので、単願で受験したことを伝えていませんでした。

併願で受験した人からすると、その高校は第一志望の高校に落ちてしまった時の滑り止めで受験するというイメージがあったそうです。

ある日、同じクラスの友達が「ウチの高校なんて単願(専願)で受験するヤツいないでしょ」と単願(専願)で受験する人のことをバカにするように言ってたのを聞いてしまいました。

その言葉を聞いた別の友達が「そんなことないでしょ」と言っていてすごい好印象だったのを覚えています。

ちなみに好印象を受けた友達にカミングアウトをしたところ、受けて入れてくれたので嬉しかったです。

アウティング事例①:一橋大学アウティング事件

アウティングされてしまったらどうなるのか。その一例として、一橋大学アウティング事件を取り上げています。

参考文献:裁判資料 一橋アウティング事件を語り継ぐ (LGBTQ+  Bridge Network) (2025年5月10日参照)

一橋大学アウティング事件①:学生Aからのカミングアウト

当時、一橋大学に通っていた学生Aと同じクラスの学生B。二人は授業を一緒に受けたり、たまに一緒にご飯を食べに行くという関係性でした。

ある日学生Aが学生BにLINEで告白しましたが、「付き合うことはできないけど、これからもよき友達でいて欲しい」と返されました。

学生Aは告白のあと、学生BとのLINEで「キモイと思うんだけど悲しいけどすげー嬉しかったm(_ _)m」と送り、それに対して学生Bは「全然キモいことはないよ」と返していました。

学生Bは学生A自身が同性愛者であることで、差別される可能性を心配していることを知っていたのではないかと思います。

一橋大学アウティング事件②:カミングアウトされてどう感じたのか

告白は失敗に終わりましたが、今までと変わらずお互い友達として接していました。

交際を断ったにもかかわらず学生Aから食事の誘いがあったことが、学生Bにとって精神的に追い詰められたそうです。

学生Aを避けるためには自分が友人から距離を置く必要があり、苦境から逃れるには仲間内で学生Aが同性愛者だと暴露するしかないと考え、アウティングを決心したそうです。

一橋大学アウティング事件③:アウティング

2015年6月24日。学生BがグループLINEに「おれもうおまえ(学生A)がゲイであることを隠しておくのムリだ。ごめん」というメッセージを送り、アウティングをしました。学生Aからカミングアウトを受けて約3か月後のことでした。

一橋大学アウティング事件④:アウティングされたらどう感じたのか

学生Aはアウティングされたことによるショックで不眠等になり、さらには学生Bと会うと吐き気や動悸がするまでに精神状態が悪化してしまいました。精神科に通うようになり、病院ではちり紙添付の抗うつ剤、安定剤、睡眠薬を処方されていました。

勉強が手につかず夜に眠ることができない日々が続いた結果、通常通り学校へ行き勉強することができず期末試験を受けることができませんでした。

大学のハラスメント相談室に相談していましたが、学生Aは大学内の建物から転落し搬送先の病院で死亡が確認されました。アウティングをされてから約2か月後のことでした。

この一橋大学アウティング事件がきっかけで、現在では様々な自治体にアウティング禁止条例が設置されています。

アウティング禁止条例が設置されている自治体 

国立市、総社市、豊島区、港区、いなべ市、宍粟市、木城町、三重県、浦添市、富士市、加西市、深谷市、江戸川区、武蔵野市、福知山市、岡崎市、逗子市、埼玉県、美作市、志布志市、明石市、杉並区、町田市、墨田区、日野市、豊橋市、天城町、東大阪市、渋川市、渋谷区、愛南町、太田市、天理市、品川区、三鷹市、臼杵市

参考文献:アウティング禁止条例を持つ自治体は26、3年で5倍に (PRIDE JAPAN)(2025年5月2日参照)

アウティング事例②:ばんの場合

アウティングの2つ目の事例として、このサイト(b-LIGHT)の運営者である「ばん」の実体験を簡単に説明します。

ばんの場合①:大学の実習で仲良くなった人にカミングアウト

ばんが当時通っていた大学では約1週間に渡り、学部や学科を超えた大学全体でのグループ実習が行われていました。

そのグループ実習で仲良くなった方(以下、Cさん)にカミングアウトをしました。

ばんの場合②:カミングアウトしていない人にセクシュアリティを知られている

大学のグループ実習が終わってしばらく経った後Cさんと再会し、その場にはCさんの友達(以下、Dさん)もいました。

ばんとDさんは初対面でDさんにはカミングアウトしていなかったのですが、Dさんはばんのセクシュアリティを知っていました。

ばんのセクシュアリティを知るにはCさんがDさんに伝えるしか方法はなく、Cさんがアウティングをしたと言えます。

ばんの場合③:アウティングされてどう感じたのか

当時は「同性愛=気持ち悪い」と言われてしまう頻度は高く、変なものを見る目で見られることに多少の免疫があったとのことです。それでも自分のセクシュアリティを勝手に他の人に知られているのは良い気分ではありません。

2人(CさんとDさん)とは違う学科だったのでその後は会うことがなく、精神的苦痛は少なく済んだとのことでした。

もし2人ともばんと同じ学科だったらどうなっていたのでしょうか。

ばんは30~40人くらいの学科に通っていたので、Cさんが他の人にもアウティングしている可能性があり、その結果同じ学科の人達がばんの陰口を叩いたり、ばんに攻撃するかもしれません。

ですので、もし2人とも同じ学科だとしたら大学を退学するか、他大学に編入していたかもしれないとのことでした。

アウティングを防ぐためには

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

当事者がどんな思いでカミングアウトをしているのか、アウティングされたらどう感じるのかを知っていただけましたでしょうか。

アウティングを防ぐためには非当事者の方の協力も必要ですが、当事者の方にもできることがあると思っています。

そのあたりに関しては今後記事にしていきたいと思っていますので、b-LIGHTの他の記事を読みながらお待ちください。

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そら

初めまして、そらと言います。99年生まれ(h11の代)のゲイでサラリーマンしながらライター活動をさせていただいてます!僕の経験や知識を活かし、主にゲイの方に向けた記事を投稿しています。